11/02/02 ABOUT ADDICT CLOTHES NEW VINTAGE ~ NEW ZIPPER

昨日からの続きになりますが、ライダースを作成するにあたって、革やシルエットにこだわるのは当たり前です。
もちろん今まで数多くの良質なヴィンテージを扱っていますので、中途半端なものは自分自身が納得できません。
例え革も狙い通りのものが使え、シルエットもいい、
でもジッパー等の付属品が既製品の中で何となく選んだ物になっていたらせっかく拘ったジャケットが台無しです。
先日のリペアのブログでも書きましたが、
ジッパーなんてどうでもいい人もいると思いますが、私はどうでもよくありません。

そこでまずは国内外のジップメーカーの既製品を調べて、
自分が使いたい形のものが無いか、無いなら別注できないか調べました。
しかしヴィンテージスタイルの引き手やエンドボックスを作っているジップメーカーのデザインは、
どれもUSヴィンテージウェアについているような形状の物ばかりです。
そっちの物はかなり忠実にデザインベースとして使われている商品が既にたくさんありますので、
需要もあるわけです。
しかしこっちはUKヴィンテージ。ルイスルイスと言われるようになって随分経ちますが、
広く見ればまだまだマイナーな存在です。
そこで私が望む形状のジッパー3種類(フロント、ボール、袖)と、
フロントジップのエンドボックスを作れる所は無いか探し始めたわけですが… 

国内外のジップメーカーに聞いてみると、メーカーが所有する既成の型を使うのではなく、
こちらからの持ち込みデザインの場合、
消化するのに一生掛かるような数のオーダーが必要と、どのメーカーからも返事がきました。
さすがにそれでは一千万円単位のとんでも無い金額になりますので、そこでジップの件は一度断念したわけです。
現実を思い知らされ、その時世の中のジャケットの多くが既製品のパーツを使っている理由が分かりました。
ジッパーに関しては、理想に近い物を作ることはできるけど、売り物としてコストを考えると作れないということです。
それからもう1度既製品の中でなんとか希望に近いものや、
それを加工して近づけることができないか調べましたが、やはり良い結果はでませんでした。

しかし、どうしても私の好きなヴィンテージと同じ形状のジッパーを付けたいという思いを諦めきれず、
しつこく色々探していたときに、
1件できるかもしれない所を見つけましたが、話してみると担当者の反応はイマイチ….. 
結局駄目だった他の工場と同じ展開になりかけましたが、途中私が言った一言で、一気に現実的になりました。
ここでは内容は言えませんが、あの時途中で諦めていたら、
今ADDICT CLOTHES NEW VINTAGEを作っていなかったと思います。

しかしそれでも生産ロットは非現実的な数でした。
普通服を作る場合、デザインや素材から入ってそれに合う付属品を既製品から選び、
もし合うものが無ければある程度大きいブランドならオリジナルで作成することもあります。
しかし大体はジッパーの引き手のみ作る場合がほとんどです。最近ジーパンは多いですね。
ライダースならフロントジッパーの引き手だけか、こだわるブランドなら袖ジップの引き手も作るかもしれません。
引き手2種類だけなら莫大な費用にはなりませんし、
大きいブランドなら大量に作らざるを得ないロットも一定時期で消化することができます。
しかし私のような小さい店を一つ持っているような規模では到底消化できません。
見積書の金額を見て躊躇してしまい別注を辞めようかとも思いましたが、
私がジャケットを作ると決めた当初のコンセプトである、

良質なヴィンテージジャケットに見劣りしない物が作れるのか? 
私自身が欲しいと思える新品のジャケットが作れるのか?

これを成し遂げるには見積書を見てビビッているわけにはいかず、
ライダースのジッパーに払う金額ではありませんでしたが、実現させたわけです。


フロントはイギリスで60年代~70年頃までによく使われていた引き手の形状をそのまま再現しました。
引き手には通常メーカー名かその頭文字が入りますので、そこはもちろんADDICTです。
フロントジップ下のエンドボックスは既にリペアブログでもご紹介済みですが、無骨なスクエアタイプです。
当時のイギリス製ライダースには細かく分けると色々な形状のものがありますが、この形状が一番好きです。

袖ジップは、引き手をイギリスで60年代から70年代に最も多く使われていた形にあわせ、
文字は頭文字のAを、型抜きではなく当時と同じプリントです。

ボールジップは似たものが既製品でもあるのですが、
個人的に細かい形状の部分で好きになれなかったのでオリジナルで作成しました。
色はヴィンテージでよくある、鈍く黒ずんだ質感を再現しました。

ほとんどの人はどうでもいいと言うかもしれませんが、個人的には大満足です。
これだけ苦労して費用も掛かったジッパーですが、そのまま売値に上乗せして価格に反映させるつもりはありません。
金具1つまで気に入らないものは付けたくない、
多分UKヴィンテージライダースに世界一没頭してきた、私の只のわがままです。

現在ではブログで何度か紹介しているとおり、リペアでもオリジナルジップを使えるようになり、
昔私自身が一消費者の立場のときに困っていた、
ヴィンテージのリペアも完璧にできるようになり、お客さんには喜んで頂けています。

ヴィンテージライダースに関してはプロ中のプロですし、
新品の服を売る仕事には過去就いていましたが、服作りに関しては素人でした。
革についても今まで見てきた物の莫大な経験はありますが、
それは感覚の話で革のタンナーさん等に比べれば専門的な知識は当たり前ですが浅いものでした。
それがジャケットを作るにあたって、
色々な革業者さんやタンナーさんとお話しすることによって専門的な知識が付き、
今までの数々のヴィンテージを見てきた経験からくるニュアンスと、
革のなめしや仕上げ、原皮等の専門的な知識が揃い、良い物が作れるようになりました。
縫製も知人の紹介で誰もが知っているブランドを縫っている工場を使うことができるようになり、
シルエットを決める上で重要な、上手いパターンナーさんにも協力していただけるようになりました。
細かい部分でサポートしてくれるスタッフにも感謝しています。
これで狙い通りの素材、パーツ、工場、パターンナーさんやスタッフ全てが揃い、
2年越しのADDICT CLOTHES NEW VINTAGEが始まったわけです。

今このブログを読んで頂いている方の中には、
ADDICT CLOTHES NEW VINTAGEをすごく楽しみにして頂いている方もいるかと思います。
ただ全てが揃った今、当初のコンセプトどおりNEW VINTAGEを一番楽しみにしているのは多分私自身だと思います。
この時点でもう既に、私の中ではADDICT CLOTHES NEW VINTAGEは成功したと言えます。
あとは今まで私の見てきた良い物を色々な形にして、
オリジナルヴィンテージ同様追及して紹介していきます。

長くなりましたが、
やっとADDICT CLOTHES NEW VINTAGEの誕生までの道のりを話しをすることができましたので、
先日のブログで発売日に用意していると言ったニュースを明日ご紹介したいと思います。

ADDICT CLOTHES NEW VINTAGE 
石嶋  聡