14/05/16 信念

今日は先日書いた大きなお知らせについて書きたいと思います。
約1年前からいつスタートできるかわからない状態で少しずつ進めていたことで、
個人的にも非常に楽しみで大きな出来事になると思っています。

いきなり結論から書くのもつまらないですし、
今回の件に通じることでもあるのでまずは私自身の物作り、店作りの考え方、
そしてADDICT CLOTHESとしての信念を書きたいと思います。
久しぶりに長くなりそうで堅苦しいかもしれませんが、
たまーに書く長いブログなんでうちの製品に興味がある方はぜひ読んでください。

私達には一般的なアパレルという枠組みの中で、他とは少し違った信念があります。
細かく挙げるときりがありませんが、大きな信念が2つあります。

まず1つめはヒストリーのある物作りをすることです。
これは言い換えるとリアリティのある物作りとも言えます。
自分達がとにかく好きな事を突き詰め、濃い時間の中で人より多く感じた経験を元に
自然発生する物作りです。

結局は店をやっている以上何かを仕入れ続ける、作り続けていかなければいけませんし、それの繰り返しです。
自分達の売り上げや利益が大事なのは当たり前ですが、一番大切なのは何が好きで、何をしたいか、
何を伝えることができて、何を教えることができるかだと思います。
好きな事も仕事にしてしまうと、いつの間にか本当にしたいことよりも売り上げへの気持ちが強くなり、
形が変わっていくことも多々あると思います。
それを否定はしませんし、長く続けるというのはそういうことだと思います。
でもADDICT CLOTHESとしては自分達が欲しいと思わない物を作ったり仕入れるようにはなりたくありません。

私は、自分が欲しいと思わない物を誰が欲しいと思うの? 
逆に、自分が欲しいんだから他の人も欲しいでしょ? 

と常日頃から思っています。

ちょっと極端な言い方ですが、今までもこれでやってきたし、今後もこれは変えないと思います。

その証拠に8年前に店を始めた時から基本的な商品構成はほとんど変わっていません。
ライダースとオイルドジャケットがヴィンテージオンリーからオリジナルも加わるようになり、
ヘルメットが無くなった代わりにエンジニアブーツや財布が増えたくらいです。
どれも昔から使っている物ばかりで、一時ライダースが流行った時期もありましたが基本的に流行とは無縁です。
夏に売るものがほとんどないのも創業当時から変わっていません。

Tシャツや布帛のシャツ、デニム以外のパンツなど、
現在のラインナップに無い物も作ることはもちろんできますが、
自分達が体現していないものを納得のいく形に仕上げることはなかなかできません。
その代わりにとてもとても狭い分野ですが、他の誰にも作れないものを作るノウハウや知識、経験を持っています。
今現在発売している製品は自分達のライフスタイルにとって必要なものばかりです。
これは自分達の製品を自信を持ってお勧めできる証しでもあります。

そして今後製品ラインナップが増えるときは、自分達が何かを経験して自然に欲求が出てきた時だと思います。
一見簡単そうなTシャツも3年後か5年後か、もしかしたら10年かかるかもしれませんね笑

仕事と考えれば自分達が本当に欲しい物ではなくても、必要な物ではなくても、
作って売れることがある意味プロだとは思いますが、うちはそういうプロにはなれそうにありません。
売れないよりたくさん売れるほうが嬉しいし、儲からないより儲けたいですが、店を始めた頃、
もしくはヴィンテージライダースにハマり始めた15年程前の情熱を10年後も20年後も自分の店や製品に持ち続けたいです。

もう1つの信念は、できる限りいつまでも製作者である自分達が直接店頭接客に携わることです。
企画、素材開発、型紙作成、生産管理、出荷、接客、等々、
うちのような小さなブランドでもやることはたくさんあります。
分業すれば効率が良くなり一つのことに集中できますが、
その分製作現場~販売現場の距離感がどんどん遠くなっていきます。
別にハイソなデザイナーを目指しているわけでもありませんし、
日常や一定のシーンで自分達やお客さんが小さく感動するような物を作っていますので、
できる限り距離感が近くなるようなスタイルを取っています。
直営店に来たことがある方ならわかると思いますが、基本的に私自身とパタンナーの二人で接客は行っています。
これは上で言ったリアリティにも通じることで、制作と販売を両方するのは時間的にとても難しいのですが、
私は販売だけしている人よりも制作現場の人間が直接販売するほうがいいと思っています。
そして普段から販売をしていることによって、制作のほうにもより深みが増すと思います。

別に服なんて着てかっこいいと思えればそれで十分だと思いますが、
拘りが多く詰め込まれている分、より多く求めてくれる人にはそれらを説明できる、
説得力のある店であり続けたいと思っています。

自分達で売るなら卸はどうなの? という考えはもちろんあります。
同じ物でも売る場所や人によって違った物に見えてしまうことを考えると、
卸をやめようかと考えたことも一時期ありましたが、
卸をやめることによって増える接客業務や在庫管理等を考えると、
結局は素材開発や制作自体の時間が無くなってしまいます。
それで時間確保の為に販売員を雇うことになっては本末転倒です。
その為、自分達が売るのになるべく近くなるように、お客さん自身や、卸先で販売する人が誰でもいつでも見れる
インターネットを使い製品説明や、この記事のようなことを書いています。

正直書くのは面倒ですし、書かなくてもそれなりに売れると思います。
でも楽しみ方は人それぞれ、できる限り理解して楽しんで着て、履いてもらいたいし、
ただ服だけ見るよりもこういうのを読んで何か好きになってくれれば楽しい輪が広がってこっちも楽しいですから。

今回いい区切りなので長々と普段書かないことまで書いてしまいましたが、やっと本題に入ります。
この度これらの信念をより強くする為、より濃いヒストリーやリアリティーを求めて移転することにしました。
もちろんただ移転するだけではより強く濃くはならないと思います。
新店舗では新しいことも始めますので、それは次回また詳しく書きたいと思います。

ADDICT CLOTHES 
石嶋 聡